2011年10月24日月曜日

第8回助教の会


第8回助教の会では生産技術研究所の田中剛平さんに「ネットワークの動的ロバスト性」というタイトルで話して頂きました。田中さんは今年7月に「複雑系動力学とその応用」というテーマを掲げて助教から特任准教授に昇進されたばかりです。

複雑系動力学を研究をする目的は、対象となる動的システムの定性的な挙動の変化(分岐現象や相転移)を調べたり、それらの性質を工学的に応用したりすることです。

その中でも、田中さんがとくに注目しているのはネットワークのロバスト性です。ネットワークは神経回路や細胞内シグナル伝達のネットワークなど自然界に普遍的に存在するだけでなく、電力ネットワーク、情報ネットワークなどがあり、私達の生活にも深く関わっています。これらのシステムはネットワークを通してつながっているため、システムの一部に障害が発生したとき、例えば今年3月にあったみずほ銀行のATM障害のように、その影響が広範囲に拡大してしまう可能性があります。そのため、一部に障害が発生した際の影響に対してネットワーク全体がどの程度ロバスト(頑健)であるか解析することは重要なのですが、これはネットワークが複雑であればあるほど容易ではありません。

田中さんによると、ネットワークのロバスト性には構造的なロバスト性と動的なロバスト性があると考えることができます。構造的なロバスト性は2000年ごろから Barabasiら[1]によって研究されてきました。例えばネットワークの一部の構成要素を取り除いたときに、ネットワーク全体の繋がりがどの程度保たれるか、さらに、それがネットワークの種類によってどのように変化するか、といったことが調べられています。一方で、動的ロバスト性はネットワークの繋がり具合ではなく、機能がどの程度保たれるかを問題にする比較的新しい考え方です。ネットワークが繋がりを保っていても、果たすべき機能を果たさなければ困るからです。

・・・とだんだん本題に迫ってきたのですが、ここから先は未発表の内容なので残念ながらブログに書くことはできません。情報が出せる段階になりましたら、更新させていただきます。

2012/2/3 追記:
上記のネットワークの動的なロバスト性に関する論文が Scientific Reports に採録されたそうです:

Gouhei Tanaka, Kai Morino & Kazuyuki Aihara (2012) Dynamical robustness in complex networks: the crucial role of low-degree nodes. Scientific Reports, vol. 2.

おめでとうございます!


[1] Réka Albert, Hawoong Jeong & Albert-László Barabási (2000) "Error and attack tolerance of complex networks." Nature 406, 378-382.

数理第6研究室 冨岡亮太

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