2015年3月30日月曜日

第34回助教の会

第34回助教の会では,数理6研の森野が「動的な素子から成るネットワークの頑強性」というタイトルで発表しました. 今回の発表内容は生物学的なネットワークの頑強性を数理的アプローチにより理解しようというものです. その為に, 神経細胞の数理モデルである Morris-Lecar モデルを C. elegans という線虫の神経細胞ネットワーク構造に従って結合させた系に関する解析を行いました.

 神経細胞の数理モデルでは神経細胞の膜電位に相当する変数があります. 神経細胞では膜電位の値が急激に大きくなった後,また小さくなる現象が知られており,発火と呼ばれています. Morris-Lecar モデルは様々なパラメータを持ちますが, これらのパラメータを変化させることで単体の数理モデルが周期的に発火する状態(周期性素子)と, 一度発火すると外部刺激がなければ再び発火することはない状態(興奮性素子)の両方を表現することができます.

 具体的な解析手順ですが,まず全てのMorris-Lecar モデル(素子)が周期性素子であるとし,それらが C. elegans の神経細胞ネットワーク状に結合している場合を考えます. そして,素子を一つずつ興奮性素子に置き換えていったときに,どれだけの割合の素子を置き換えるとネットワーク全体の平均発火率が大きく減少するかについて, ギャップジャンクションとシナプス結合の有無やその結合強度を変化させた条件の下,置き換える素子の順番なども変化させながら解析しました. その結果,平均発火率が大きく減少する割合は置き換えの手順に依存し,パラメータの値によっても大きく異なることがわかりました.

 本研究の詳細は, 動的頑強性のレビューと共に"Mathematical Approaches to Biological Systems Networks, Oscillations, and Collective Motions" (Springer, 2015) の第二章 (G. Tanaka, K. Morino, and K. Aihara, "Dynamical Robustness of Complex Biological Networks") にて詳しく述べられています (書籍へのリンク)

数理情報第六研究室 森野佳生